みなさん、今日は江南のほうの話をひとつしてみようと思います。
大母山、ご存知ですよね。ソウルのど真ん中に寄り添うように立っている山で、昼間は近所の方が散歩したり運動したりする、ごく普通の山です。ただ、人から聞いた話なんですが、その山に少しおかしなものがあるらしいんです。
マネキンだそうです。木に吊るされたマネキン。
最初にこの話をしてくれた人は、数年前の晩秋の夕方、ひとりでその山の中腹の登山道を歩いていたそうです。ちょうど日が沈みかけて、木々の間から光が消えていく、あの曖昧な時間帯に。そのとき、遠くに何かぶら下がっているものが見えたと。最初はビニール袋か布切れかと思ったそうです。そのまま通り過ぎようとして、足が止まったと。
韓服だったそうです。
白いチョゴリにチマを着ていて、頭がある。体がある。縄が首に巻かれて、木の枝に結ばれていたそうです。それがマネキンだとわかった瞬間でさえ、足が動かなかったと。なぜかというと、髪が顔を覆っていて、その髪が風に揺れていたから。ごくゆっくりと。
その人が言っていました。においがしたと。何かじめじめとした古いにおい、濡れた木のようでもあり古い布のようでもあるにおいが鼻をついて、それがそのマネキンのほうから漂ってきたと。それが一番怖かったと。プラスチックから出るはずのないにおいだったと。
はっきりとはわかりませんが、その日以来、その人はその山に行かないそうです。
ただ問題なのは、それがひとつではないということです。最初は一つか二つあったようなのですが、今はかなりの数があちこちに吊るされているとのことで。全部韓服を着ていて、全部髪が顔を覆っていて、全部木に首を縛られているそうです。まるで誰かが、今も増やし続けているかのように。
なぜそんなものがそこにあるのか、正確に知っている人はいないそうです。山の開発に絡んだ土地問題で誰かが意図的に置いたのだという話もあるし、その山のどこかに古い墓所があってそれと関係があるという話もある。確かめられたことは何もありません。
ただ、ひとつ聞いた話が、どうしても引っかかっているんです。
その山で夜間登山をしていて、マネキンの前で写真を撮った人がいたそうです。冗談半分で。フラッシュを焚いて撮ったんですが、後で写真を見たらマネキンの顔が写っていたと。髪が顔から払われていたと。でもその人は、シャッターを切ったその瞬間に髪がどいていたかどうか、記憶がないそうです。確かに顔は隠れていたと言っていたのに。
フラッシュが光るあの一瞬に、それが顔を上げたと考えるには、あまりにも怖すぎる。
最初から顔が見えていたと考えるには、その人の記憶があまりにも鮮明すぎると。
大母山です。昼間に行っても、ときどきそれが見えると言う人がいます。木の枝の間から、白いものが、揺れているのだと。