みなさん、今日はクァンジュ(광주)の方から聞いた話をひとつしましょう。
確かなことは言えません。私も知り合いから聞いた話で、その人もまた誰かから聞いたと言っていたので。ただ、そういう話が流れているということです。
クァンジュ(광주)の外れに、山の斜面を登っていくと細い土道がひとつあるそうです。地図にもほとんど載っていない道。その道を十五分ほど上がっていくと学校がひとつ現れるというのですが、今は雑草が膝の上まで伸び、塀には苔が厚くこびりつき、窓ガラスはほとんど割れた状態だと言います。近くの住民に尋ねると、みんな少し口を閉ざしてから、しばらくしてこう言うそうです。「あそこは三十年前に突然閉まったところだよ」。なぜ閉まったのかとさらに聞くと、ただ顔を背けるだけだと。
その学校に実際に入った人がいます。去年か一昨年か、二十代前半の青年で、名前はわからないのですが、廃墟探索をしている人だったそうです。昼間に入ったのに、建物の中に踏み込んだ瞬間、昼なのか夜なのかわからないほど暗かったと言います。一階の教室を通り過ぎて階段を上がろうとしたとき、手すりを掴んだら手に何かねばついたものがついたそうです。埃なのか何なのかわからないけれど、拭いても拭いても、その感触が手のひらから消えない気がしたと。
二階の廊下の突き当たりに音楽室がありました。扉が半分開いていたのですが、まず匂いが来たと言います。古い建物によくある、あのかびくさくじめじめした匂いがあるじゃないですか。でもそうではなく、何か甘い匂いがしたと。古い木材が燃えかけたような、どこか甘ったるい匂い。それがよけいに不快だったと言います。その匂いに、どこか覚えがある気がして。
音楽室の中にはピアノがありました。黒いピアノ。鍵盤の蓋が開いていたのですが、それがおかしかったと言います。三十年間誰も入っていないはずの場所なのに、蓋が開いているのだから。その青年が近づいて、鍵盤をひとつ押してみたそうです。ただ音が出るか気になって。ところが音がしなかった。あの古びたピアノから、何の音も出なかったと言います。
それでそのまま振り返ろうとしたとき……
音がしました。
自分が触れた鍵盤ではなく、別のところから。ピアノの右端、高い音域の方から。ごくゆっくりと、一音ずつ。ド……レ……ミ……。幼い子どもが初めてピアノを習うとき、たどたどしく弾くように。青年が振り返ると、誰もおらず、鍵盤の上には何もなかった。ただ鍵盤が独りでに押されていたと言います。押されるたびに鍵盤がわずかに沈むのが、目にはっきり見えたと。
その瞬間、その青年が感じたのが何かわかりますか。怖くはなかったと言います。最初は。ただひどく悲しかったと。なぜ悲しいのかもわからないのに、涙が出そうだったと。そっちの方がおかしくないですか。
走って廊下を駆け抜けながら、音楽室の扉の横の壁に何かびっしりと書かれているのが見えたそうです。走りながらすれ違っただけなので全部は読めなかったけれど、たった一行だけ目に入ったと言います。小さな文字で、いくつもの手が書いたように字体がばらばらなのに、同じ文章が繰り返されていたと。
「先生が来てはいけません」
その青年、今もあの甘い匂いが何だったのかわからないと言います。そしてあの日以来、眠りに落ちる直前に、ときどきあのピアノの音が聞こえるそうです。高い音域から一音ずつ、ごくゆっくりと。