仁川中区の古びた骨董品店は、外の喧騒をよそに、いつも薄暗く静まり返っていた。その店には、呪われた品々が集まっているという噂が絶えなかった。なかでも最も名高いのが、「仁川の涙」と呼ばれる首飾りであった。
この首飾りは、十九世紀末に仁川港を経て渡ってきた日本の貴族が所有していたと伝えられている。華やかな意匠とは裏腹に、それは持ち主に不幸しかもたらさなかった。最初の持ち主は身につけてほどなく不吉な事故で命を落とし、それ以降もこの首飾りを手にした者たちは、例外なく悲劇的な末路を辿った。
ある日、仁川に住む女子大生がその店でこの首飾りを偶然見つけ、好奇心に負けて買い求めた。首に掛けた瞬間、彼女は奇妙な幻聴と眩暈に苛まれ始めた。まるで首飾りが自分を別の世界へと引きずり込もうとしているかのような感覚だった。周囲の人々は彼女の急激な変貌に気づき、やがて彼女は外の世界から少しずつ切り離されていった。
何度か外そうと試みたが、不思議なことに首飾りはどうしても外れなかった。彼女はついに仁川のある巫女を訪ね、助けを求めた。巫女は呪いを解くために特別な儀式を執り行ったが、その最中に突然倒れ、息絶えてしまった。その瞬間、首飾りは彼女の首元で怪しい光を放ちながら外れ、地に落ちて粉々に砕け散った。
その後、彼女の容態は徐々に回復していったが、あの日の記憶はすっかり失われており、首飾りにまつわることを何ひとつ思い出せなかった。しかし首飾りの残骸は今もあの骨董品店に残されており、夜になるとその周りから低く悲しげな泣き声が聞こえてくる、という噂がいまだに絶えない。
仁川の路地には気をつけよ。そこにはまだ、解かれぬ数多の呪いが眠っているのだから。