渋谷の肉の館

作成者 カイダンボット AI生成 未確認 日本語 原作 · Tokyo 3 2026/7/3
KW-8056 | 受信 2026/7/3 未確認
提報者 匿名希望 | 座標 35.6895, 139.6917 | Tokyo

……聞いた話なんですがね。

確かめようがないんで、本当かどうかは、わたしにはわかりません。ただ、これを教えてくれた人が、やけに落ち着いた声で話すもんですから、それがかえって気持ち悪くて。

渋谷の話です。

駅から歩いて十分ほど、観光客がよく行くあのあたりから、ちょっとだけ路地に入ったところに、なんとも妙な建物があるんだそうで。外観はどうってことない、古びた雑居ビルみたいなものらしいんですよ。看板もない、表札もない。ただ扉だけがある。

界隈では、その建物のことを「肉の館」と呼んでるんだそうです。なんでそんな名前がついたのか、誰も知らない。知ってる人は、もう話せなくなってるから、とも言うんですけど。

さて。佐藤さんという、二十代の画家の卵がいましてね。

渋谷に安いアパートを借りて、絵を描きながら暮らしていた。絵の題材を探すのが好きで、夜の街をよくひとりで歩き回っていたそうです。そういう人なんですよ、見てはいけないものを見たくなる、そういう性分の。

その夜は十一月の終わりで、冷え込みが厳しかったと言います。

路地に入ったとたん、音が消えたと。渋谷の夜というのは、どこにいてもざわめきが聞こえているものでしょう。それが、すっと消えた。足音だけが、自分の足音だけが、妙にはっきり聞こえてきて、佐藤さんは立ち止まったそうです。

扉の前に着いたとき、においがした、と。

生臭い、というより、温かい、と言ったほうが近いかもしれない。冬の夜に、なにか温かくてやわらかいものが、扉の向こうで息をしているような、そういうにおい。

それでも彼は、扉を開けた。

中は廊下になっていたそうです。電球がひとつ、薄く灯っていて。壁が、おかしかった。壁紙でも、コンクリートでもない。なんというか、やわらかそうで、薄く光って、ゆっくりと、動いていた。触れてはいないのに、脈打つ感覚が、空気を通して伝わってきたと言うんです。掌に、じんわりと。

奥に部屋があって、佐藤さんはそこまで歩いた。

部屋の中には鏡が一枚、立てかけてあった。

自分の顔が映っていた。最初はそれだけでした。ちゃんと、佐藤さんの顔が。

ところが、じっと見ていると、鏡の中の顔が、ゆっくりと変わりはじめた。皮膚が、引っ張られるように伸びていく。顎のあたりが、ぐにゃりと。そして、目が、増えた。

頬のあたりに、もうひとつ、目が開いた。

瞬きをした。その目が、瞬きをしたんだそうです。

佐藤さんは声を上げようとしたが、喉が鳴らなかった。足が、床に貼りついたように動かない。そのとき、壁が、裂けた。

すっと、縦に裂けて、中から、人が出てきた。何人も。顔のない人たちが。のっぺりとした肌が顔の場所にあって、それでも、こちらに向かってくる。音もなく、すり足で。

そのうちのひとりが、佐藤さんの耳元まで来て、ささやいたそうです。

声帯がないはずなのに、声がした。

「あなたも、そうなるよ」

それだけ言った。

佐藤さんはそこで我に返って、廊下を走って、扉を蹴破るようにして外に出た。渋谷の音が、どっと戻ってきた。

震える手でスマートフォンを出して、カメラで自分の顔を確認した。

ちゃんと自分の顔だった、と、最初は思ったそうです。

でも、よく見たら、左の頬に、うっすらと、線が入っていた。まぶたのような、横一文字の線が。

それは、翌朝には消えていた。

消えていたから、夢だったのかもしれない。そう思って、佐藤さんはしばらく誰にも言わなかった。

ただ、その話を聞かせてくれた人が最後にこう言ったんですよ。

佐藤さんは今も絵を描いているけれど、最近描く絵には、必ず、どこかに余分な目がひとつ、紛れ込んでいる、と。本人は気づいていないらしい、と。

渋谷の肉の館

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これは噂を題材にしたフィクションです。実在の人物・団体・店舗・場所とは関係なく、地名は演出であり、実際の出来事を主張するものではありません。

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判定 未確認
噂指数 10%
ラジオ再生時間 5分 08秒

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